Ⅰ.現物分配法人の税務
1.資産の移転に係る譲渡損益
内国法人が適格現物分配により被現物分配法人その他の株主等にその有する資産の移転をしたときは、当該被現物分配法人その他の株主等に当該移転をした資産の当該適格現物分配の直前の帳簿価額(当該適格現物分配が残余財産の全部の分配である場合には、その残余財産の確定の時の帳簿価額)による譲渡をしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する(法法62条の5第3項)。
2.資本金等の額の減少
残余財産の一部の分配の場合、資本金等の額から残余財産の一部の分配に係る減資資本金額を控除する(法令8条1項18号)。
種類株式を発行しない場合、減資資本金額は次の算式により計算した金額である(法令8条1項18号)。ただしその計算した金額は現物分配により交付する資産のその交付する直前の帳簿価額を限度とする(法令8条1項18号かっこ書き)。
残余財産の一部の分配の直前の資本金等の額 × 払戻割合
払戻割合は原則として「解散による残余財産の一部の分配により交付した資産の交付直前の帳簿価額」を「前事業年度終了の時の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額」で除して計算する(小数点以下三位未満切上げ)。また払戻割合の上限は1である(法令8条1項18号イ(2)かっこ書き)。
3.利益積立金額の減少
残余財産の一部の分配の場合において、交付する資産の交付の直前の帳簿価額が減資資本金額を超えるときは、利益積立金額からその超える部分の金額を控除する(法令9条12号)。
4.源泉徴収
適格現物分配は所得税法上の配当とならない(所法24条1項)。そのため源泉徴収は不要である。
Ⅱ.被現物分配法人の税務
1.現物分配により取得した資産の取得価額
適格現物分配直前の帳簿価額相当額(法令123条の6第1項)
2.みなし配当
法人の株主等である内国法人が当該法人の適格現物分配による残余財産の分配により資産の交付を受けた場合において、当該法人のその交付の直前の当該資産の帳簿価額に相当する金額が当該法人の資本金等の額のうちその交付の基因となつた当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額は配当等とみなされ、受取配当等の益金不算入の規定が適用される(法法24条1項)。
3.有価証券の譲渡損益
内国法人が、所有株式を発行した他の内国法人で当該内国法人との間に完全支配関係があるものからみなし配当事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合、譲渡対価の額は譲渡原価の額相当額とされる(法法62条の2第17項)。
4.資本金等の額の減少
内国法人である法人がみなし配当事由により当該法人との間に完全支配関係がある他の内国法人から金銭その他の資産の交付を受けた場合、資本金等の額から次の金額を控除する(法令8条1項22号)。
当該みなし配当事由に係るみなし配当の額及び当該みなし配当事由に係る有価証券の譲渡対価の額とされた金額の合計額から適格現物分配により取得した資産の取得価額を減算した金額に相当する金額
5.益金不算入
内国法人が適格現物分配により資産の移転を受けたことにより生ずる収益の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない(法法62条の5第4項)。
6.利益積立金額の増加
利益積立金額に現物分配法人から交付を受けた資産の当該適格現物分配の直前の帳簿価額相当額を加算する(法令9条4号)。ただしみなし配当が生ずる場合、控除額からみなし配当計算時の株式又は出資に対応する部分の金額を控除する(法令9条4号かっこ書き)。
7.適格組織再編成等が行われた場合の欠損金の使用制限
一定の要件を満たした場合、適格組織再編成等が行われた場合の欠損金の使用制限の規定が適用される。
8.特定組織再編成等が行われた場合の特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入
一定の要件を満たした場合、特定組織再編成等が行われた場合の特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入の規定が適用される。