1.破産手続の流れと各段階における債権者の税務
(1)基本的な流れ
債務者が破産した場合、債務者が有する資産が換価=売却され、それを原資として債権者に配当=支払いがなされる。債務者が法人の場合、最終的にその法人が消滅する。破産手続きはおおまかには次のような流れにより処理される。
- ① 債務者による破産手続開始の申立て
- ② 裁判所による破産手続開始の決定
- ③ 資産の換価・債権者による債権の届出・債権者集会等
- ④ 最後配当
- ⑤ 破産手続終結の決定
(2)債務者による破産手続開始の申立
まず一般的に債務者が裁判所に対し破産手続の開始を申し立てる。
この段階では他の要件を満たせば基本的に個別評価金銭債権として金銭債権の額の50%を貸倒引当金として計上することができる(法令96条1項3号ハ)。ただし破産法では申立の段階では債権者に対する通知は義務付けられていない。
破産手続開始の申立をしても必ずしも破産手続開始の決定がされるわけではない。しかし破産手続開始の申立後に破産手続開始の決定が行われなかった場合に関する税務上の明文規定はない。
(3)裁判所による破産手続開始の決定
破産手続開始の申立が行われると、裁判所はその申し立て内容を審査する。問題がなければ、裁判所は破産手続開始の決定をする。破産手続開始の決定がされるとその旨が公告されるとともに、知れている債権者に対しては破産手続開始通知書が送付される(破産法32条1項、3項)。
この段階に対応する税務上明文の規定はない。しかし実務上はこの段階で債務者が破産手続の開始の申立をしたことがわかることが多いと思われる。
(4)資産の換価・債権の届出・債権者集会等
破産手続が開始されると破産管財人が選任され資産の換価や債権者集会などが行われる。
この段階に対応する税務上明文の規定はない。
(5)最後配当
資産の換価が終了すると債権者に対して最後の配当が行われる(破産法195条)。最後配当をする場合、届出をした債権者に対して配当額が通知される(破産法201条7項)。
この段階に対応する税務上明文の規定はない。しかし最後配当により基本的に債務者の財産はなくなるため、金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになったものとして貸倒損失を計上できるものと考える(法基通9-6-2)。ただし後述する破産手続終結後の方が質疑応答事例があり安全性が高いため、この段階では貸倒損失を計上せずに破産手続終結時に貸倒損失を計上した方がよいと思われる。
(6)破産手続終結の決定
最後配当が行われた後、裁判所は破産手続終結の決定を行う(破産法220条1項)。破産者が法人である場合、裁判所は破産手続終結の登記を登記所に嘱託し、登記所はその法人の登記記録を閉鎖する(破産法257条7項、商業登記規則117条3項1号)。そしてその法人は法人格を失う。ただし法人が破産した場合、個人とは異なり免責はないため、債権が消滅するという明文の規定はない。
しかし破産手続終結時に破産した法人に残余財産が存在しないときは、破産した法人に対する金銭債権もその全額が消滅したとするのが相当であるとされる(質疑応答事例「残余財産がない破産法人の破産手続終結の決定があった場合における当該破産法人に対する金銭債権の貸倒れ」)。通常破産手続終結後には残余財産はないため、貸倒損失を計上するのであればこの段階が最も安全性が高いと考える。ただし破産手続終結の決定は公告はされ、破産者に通知されるものの、債権者には通知されない(破産法220条2項)。そのため公告を定期的に確認するか、破産管財人に確認する必要がある。
2.配当金額が0円であると見込まれる場合等
破産手続を開始した後に配当できる財産がないと判明した場合、破産法上は裁判所によって破産手続は廃止される。これを異時廃止という。異時廃止に関する税務上の規定はないものの、破産手続終結の決定前であっても破産管財人から配当金額が0円であることの証明がある場合、貸倒損失を計上することができるものとされる(質疑応答事例「残余財産がない破産法人の破産手続終結の決定があった場合における当該破産法人に対する金銭債権の貸倒れ」。異時廃止となった場合は配当金額が0円と見込まれる場合に該当し、貸倒損失を計上できるものと考える。なお異時廃止の場合、債権者集会の期日において債権者の意見を聴かなければならないとされている(破産法217条1項)。そして裁判所が破産手続廃止の決定をしたときは公告がなされるとともに、破産者及び破産管財人に通知される(破産法217条3項)。しかし債権者に通知する義務はないため、破産管財人への確認等が必要となる。
また破産管財人から配当金額が0円であることの証明が受けられない場合であっても破産法人の資産の処分が終了し、今後の回収が見込まれないまま破産終結までに相当期間がかかるときなど、破産手続終結の決定前であっても破産法人からの配当がないことが明らかな場合は、その明らかとなった事業年度において、貸倒損失を計上することができる質疑応答事例「残余財産がない破産法人の破産手続終結の決定があった場合における当該破産法人に対する金銭債権の貸倒れ。
なお上記は法人税基本通達9-6-1ではなく、9-6-2に基づく処理となるため、損金経理が要件となる。
3.書面による債務免除による貸倒損失の計上
債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合、その債務者に対し書面により債務免除することにより貸倒損失を計上することができる(法基通9-6-1(4))。債務者が破産した場合であっても配当を受けられる可能性があるため、弁済を受けることができないと認められるのは最後配当をしたときか異時廃止等になったときであると考える。これらの時点では書面による債務免除をしなくても貸倒損失の計上が認められるため、わざわざ書面により債務免除するメリットはないように思う。
4.債権者による破産手続開始の申立
破産法上は債権者も破産手続の開始を申し立てることができる。しかし手間や費用がかかる。また回収不能部分を損金に算入するだけであれば債権をサービサーに売却するという方法もあるため、貸倒損失を計上するためだけに債権者が破産手続の開始を申し立てることは合理的ではないと考える。