資本剰余金を原資とする現物分配の税務

1.非適格現物分配

(1)現物分配法人

①資産の譲渡

現物分配する資産は時価で譲渡したものとされる。そのため譲渡損益が計上される。

②資本金等の額

資本剰余金を原資とする剰余金の配当であるため、資本金等の額から減資資本金額を減額する(法令8条1項18号)。減資資本金額とは、当該現物分配の直前の資本金等の額に(1)に掲げる金額のうちに(2)に掲げる金額の占める割合を乗じて計算した金額をいう。

  • (1) 当該資本の払戻し等の日の属する事業年度の前事業年度終了の時の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額
  • (2) 当該資本剰余金を原資とする現物分配により減少した資本剰余金の額

(1)に掲げる金額のうちに(2)に掲げる金額の占める割合をここでは減資割合と呼称する。減資割合算定時の留意点は以下の通りである。

  • 当該現物分配の日以前6月以内に仮決算による中間申告書を提出し、かつ、その提出した日から当該現物分配の日までの間に確定申告書を提出していなかった場合には、当該中間申告書に係る中間申告対象期間の終了の時が(1)の純資産算定の基準時となる。
  • 純資産の算定時負債には新株予約権及び株式引受権に係る義務を含む。
  • 純資産算定の基準時から当該現物分配の直前の時までの間に資本金等の額又は利益積立金額(法人税法施行令第1号及び第6号に掲げる金額を除く。)が増加し、又は減少した場合には、(1)にその増加した金額を加算し、又はその減少した金額を減算する
  • 当該現物分配直前の資本金等の額が0以下である場合、減資割合は0となる。
  • 当該現物分配直前の資本金等の額が0を超え、かつ、(1)に掲げる金額が0以下である場合、減資割合は1となる。
  • 減資割合に小数点以下三位未満の端数があるときはこれを切り上げる。

減資資本金額計算時の留意点は以下の通りである。

  • 減資資本金額が当該資本剰余金を原資とする現物分配により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額を超える場合には、その超える部分の金額を減算する。

③利益積立金額

現物分配により交付した資産の時価が減資資本金額を超える場合、利益積立金額からその超える部分の金額を控除する(法令9条12号)。

(2)被現物分配法人

①資産の取得

現物分配された資産は時価で取得したものとされる。

②みなし配当

資本剰余金を原資とする剰余金の配当であるため、現物分配された資産の時価が当該現物分配に係る払戻等対応資本金額等のうち被現物分配法人の有する現物分配法人株式に対応する部分の金額を超える場合、その超える部分がみなし配当とされる(法法24条1項4号、法令23条1項3号)。現物分配における払戻等対応資本金額等とは、現物分配法人の当該現物分配直前の資本金等の額に払戻等割合を乗じて計算した金額をいう。払戻等割合とは、現物分配法人が種類株式発行会社でない場合、現物分配法人の(1)に掲げる金額のうちに(2)に掲げる金額の占める割合をいう(法令119条の9第1項、23条1項4号イ)。

  • (1) 当該資本剰余金を原資とする現物分配の日の属する事業年度の前事業年度終了の時の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額
  • (2) 当該資本剰余金を原資とする現物分配により減少した資本剰余金の額

払戻等割合の計算上以下の点を留意する必要がある。

  • 当該現物分配直前の資本金等の額が0以下である場合、払戻等割合は0となる。
  • 当該現物分配直前の資本金等の額が0を超え、かつ、(1)に掲げる金額が零以下である場合、払戻等割合は1となる。
  • 当該現物分配の日以前6月以内に仮決算による中間申告書を提出し、かつ、その提出の日から当該現物分配の日までの間に確定申告書を提出していなかった場合、当該中間申告書に係る中間申告対象期間の終了の時が純資産算定の基準時となる。
  • 負債には新株予約権及び株式引受権に係る義務が含まれる。
  • 純資産算定の基準となる時から当該資本剰余金を原資とする現物分配の直前の時までの間に資本金等の額又は利益積立金額(法人税法施行令第9条第1号及び第6号に掲げる金額を除く。)が増加し、又は減少した場合には、(1)の金額にその増加した金額を加算し、又はその減少した金額を減算する。
  • 当該資本剰余金を原資とする現物分配により減少した資本剰余金の額が(1)に掲げる金額を超える場合には、(1)に掲げる金額が分子となる。
  • 払戻等割合に小数点以下三位未満の端数があるときはこれを切り上げる

また払戻等対応資本金額等の計算上以下の点を留意する必要がある。

  • 現物分配法人の当該現物分配直前の資本金等の額に払戻等割合を乗じて計算した金額が当該資本剰余金を原資とする現物分配により減少した資本剰余金の額を超えるときは、その超える部分の金額を控除する。

③被現物分配法人が有する現物分配法人株式の譲渡等

現物分配法人の株式を一部譲渡したものとされる。譲渡対価の額は現物分配された資産の時価からみなし配当の金額を控除した金額である(法法61条の2第1項1号)。譲渡原価の額は現物分配法人の株式の現物分配直前の帳簿価額に②の払戻等割合を乗じて計算した金額である(法法61条の2第18項、法令119条の9第1項)。

2.適格現物分配

(1)現物分配法人

①資産の譲渡

現物分配する資産は簿価で譲渡したものとされる(法法62条の5第3項)。そのため譲渡損益は計上されない。

②資本金等の額

資本剰余金を原資とする剰余金の配当であるため、資本金等の額から減資資本金額を減額する(法令8条1項18号)。減資資本金額の計算方法は基本的に非適格現物分配と同様であるが、現物分配した資産の時価ではなく簿価により計算する。

③利益積立金額

現物分配により交付した資産の簿価が減資資本金額を超える場合、利益積立金額からその超える部分の金額を控除する(法令9条12号)。

(2)被現物分配法人

①資産の取得

現物分配法人における現物分配直前の帳簿価額が現物分配された資産の取得価額となる(法令123条の6第1項)。

②みなし配当

適格現物分配であっても資本剰余金を原資とする剰余金の配当であるため、みなし配当事由に該当する。みなし配当の計算方法は基本的に非適格現物分配と同様であるが、現物分配した資産の時価ではなく簿価により計算する。

みなし配当部分には受取配当等の益金不算入の規定は適用されない(法法24条1項4号、23条1項かっこ書き)。ただし内国法人が適格現物分配により資産の移転を受けたことにより生ずる収益の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない旨の規定が定められており、課税は発生しない(法法62条の5第4項)。税務上は収益が発生しないため、代わりに利益積立金額にみなし配当相当額が加算される(法令9条4号、利益積立金額には現物分配法人から交付を受けた資産の当該適格現物分配の直前の帳簿価額から払戻等対応資本金額等のうち被現物分配法人の有する現物分配法人株式に対応する部分の金額を控除した金額、言い換えればみなし配当相当額が加算される)。

③被現物分配法人が有する現物分配法人株式の譲渡等

現物分配法人の株式を一部譲渡したものとされる。適格現物分配の場合、譲渡対価の額は譲渡原価の額と同額とされる(法法61条の2第17項)。譲渡原価の額は現物分配法人の株式の現物分配直前の帳簿価額に②の払戻等割合を乗じて計算した金額である(法法61条の2第18項、法令119条の9第1項)。払戻等割合の計算は基本的に非適格現物分配と同様であるが、現物分配した資産の時価ではなく簿価により計算する。

譲渡対価の額が譲渡原価の額と同額とされるため、譲渡損益は生じない。その代わり資本金等の額が減少する。すなわち資本金等の額から「『みなし配当の金額及び当該みなし配当に係る株式の譲渡対価の額の合計額』から『現物分配により交付を受けた資産の取得価額』を控除した金額」が控除される(法令8条1項22号)。適格現物分配の場合、みなし配当に係る株式の譲渡対価の額は譲渡原価の額と同額であるため、資本金等の額から譲渡損益相当額控除されることになる。

3.具体例

(1)前提条件

  • 現物分配する資産の現物分配法人における簿価は8,000、時価は10,000とする。
  • 現物分配法人の現物分配直前の資本金等の額は100,000とする。
  • 現物分配法人の減資割合・払戻等割合の計算の基礎となる純資産は250,000とする。
  • 被現物分配法人の有する現物分配法人の株式の簿価は110,000とする。
  • 非適格現物分配の計算例でも適格現物分配の計算例でも現物分配法人の株主は1社で、現物分配法人の株式を100%保有しているものとする。ただし非適格現物分配の計算例でも便宜的に非適格現物分配に該当するものとする。

(2)非適格現物分配

①現物分配法人

以下のような仕訳となる。

借方貸方
資本金等の額4,000資産9,000
利益積立金額6,000譲渡損益1,000

②被現物分配法人

以下のような仕訳となる。

借方貸方
資産10,000みなし配当6,000
譲渡損益400有価証券4,400

(2)適格現物分配

①現物分配法人

以下のような仕訳となる。

借方貸方
資本金等の額4,000資産9,000
利益積立金額5,000

②被現物分配法人

以下のような仕訳となる。

借方貸方
資産9,000利益積立金額5,000
資本金等の額400有価証券4,400

なお法人税申告書の別表を記載する上では「利益積立金額」は「受取配当」とした方が実務的であると考える。直接利益積立金額の変動額を別表五(一)に記載すると別表四と別表五(一)の検算式が成立しなくなるためである。いったん別表四において「受取配当計上漏れ」等としてみなし配当額を加算留保し、その後同額を「適格現物分配に係る益金不算入額」として減算社外流出させれば、別表四と別表五(一)の検算式が成立するようになる。