非適格合併等に係る資産等超過差額

1.資産等超過差額の意義と基本的な取扱い

資産等超過差額とは、資産調整勘定が計上される非適格合併等により交付された対価の非適格合併等の時における価額がその非適格合併等により対価を交付することを約した時の価額と著しい差異を生じている場合におけるこれらの価額の差額等をいう(法令123条の10第4項)。

資産等超過差額が生じるのは資産調整勘定が生じる場合である。資産調整勘定の金額は基本的に非適格合併等対価額が移転を受けた資産および負債の時価純資産価額を超える部分の金額である。ただし資産等超過差額に相当する金額は資産調整勘定から除外される。例えば非適格合併等対価額が1,000であり、移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額が700である場合において、資産等超過差額がなければ資産調整勘定の金額は300である。しかし例えば資産等超過差額が100あるとなると資産調整勘定の金額は300から100を控除した200となる。差額はそのまま資産等超過差額として計上される。

資産調整勘定は5年で損金の額に算入され節税効果があるが、資産等超過差額は損金の額に算入されないため、資産等超過差額が生じた場合、節税効果が少なくなる。

2.資産等超過差額が生じる場合

具体的には以下の場合、資産等超過差額が生じる。

  • ①非適格合併等対価資産の交付時価額が約定時価額の2倍を超える場合(法規27条の16第1項1号)
  • ②非適格合併等対価額が移転を受けた資産および負債の時価純資産価額を超える部分の金額がその合併又は分割により移転を受ける事業により見込まれる収益の額の状況その他の事情からみて実質的にその合併又は分割に係る被合併法人又は分割法人の欠損金額に相当する部分から成ると認められる金額があるとき(法規27条の16第1項2号)

用語の意義は以下の通りである。

非適格合併等対価資産非適格合併等の対価となる資産
交付時価額非適格合併等対価資産の非適格合併等の時における価額
約定時価額非適格合併等対価資産の非適格合併等により非適格合併等対価資産を交付することを約した時の価額

①はわかりやすいが、②はわかりにくい。通達等にも定めはないが、例えば債務超過の会社をある程度の金額で非適格合併等をした場合は②に該当する可能性があると考える。例えば資産が600、負債が1,000の会社を対価100で非適格合併等をした場合、資産等超過差額が生じないとすれば500の資産調整勘定が生じる(100 – (600 – 1,000))。その結果、毎期基本的に100損金の額に算入される。しかし債務超過の会社に事業の好転する見込みがあればともかく、ないのであれば純資産価額と対価の差額を超過収益力として認められないと考える。そうであれば損金性は認められず、資産等超過差額として計上することになると考える。

3.資産等超過差額の金額

(1)非適格合併等対価資産の交付時価額が約定時価額の2倍を超える場合

基本的に非適格合併等対価資産の交付時価額から約定時価額を控除した金額が資産等超過差額となる(法規27条の16第1項1号ロ)。移転を受けた資産および負債の時価純資産価額が約定時価額を超える場合は、交付時価額から時価純資産価額を控除した金額が資産等超過差額となる(法規27条の16第1項1号ロ)。

また非適格合併等により移転を受けた事業の価値に相当する金額をその事業により見込まれる収益の額を基礎として合理的に見積もっており、その算定の根拠を明らかにする事項を記載した書類及びその算定の基礎と事項を記載した書類を保存している場合、非適格合併等対価資産の交付時価額からその見積もった金額を控除した金額を資産等超過差額とすることができる(法規27条の16第1項1号かっこ書き、同号イ)。

(2)欠損金額に相当する部分から成ると認められる金額があるとき

その欠損金額に相当する部分からなると認められる金額が資産等超過差額となる(法規27条の16第1項2号)。ただし移転を受ける事業による収益の額によって補填されると見込まれる部分の金額を除く(法規27条の16第1項2号かっこ書き)。