1.交際費等の損金不算入の意義
交際費等は本質的には経費であるが、政策的な観点から損金算入が制限されている。
2.交際費等の範囲
(1)交際費等の定義等
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待等のために支出するものをいう(措法61条の4第6項)。
ただし以下のものは交際費等に含まれない。
- 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用(措法61条の4第6項1号)
- 飲食費であって、一人当たりの支出額が10,000円以下であるもの(措法61条の4第6項2号、措令37条の5第1項)
- カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用(措法61条の4第6項3号、措令37条の5第2項1号)
- 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用(措法61条の4第6項3号、措令37条の5第2項2号)
- 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用(措法61条の4第6項3号、措令37条の5第2項3号)
(2)飲食費を交際費等から除外するための要件
飲食費であって、一人当たりの支出額が10,000円以下であるものは交際費等から除外される(措法61条の4第6項2号、措令37条の5第1項)。ただし次の事項を記載した書類を保存していなければならない(措法61条の4第8項、措規21条の18の4)。
- その飲食費に係る飲食等のあった年月日
- その飲食費に係る飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
- その飲食費に係る飲食等に参加した者の数
- その飲食費の額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地
- その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項
3.損金不算入額
(1)損金不算入額の計算
交際費等の額のうち損金算入限度額を超えた部分が損金の額に算入されない。
(2)損金算入限度額
交際費等の損金算入限度額は法人の区分ごとに異なる。法人の区分と損金算入限度額は以下のとおりである(措法61条の4第1項、2項)。
法人の区分 | 損金算入限度額 | |
中小法人 | 次のうちいずれかの金額 ①接待飲食費の額の50%相当額 ②年800万円 | |
中小法人以外の法人 | 期末資本金の額又は期末出資金の額が100億円以下の法人 | 接待飲食費の額の50%相当額 |
期末資本金の額又は期末出資金の額が100億円を超える法人 | 0円 |
(3)接待飲食費
接待飲食費とは、交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用をいう(措法61条の4第6項)。交際費等から除外される飲食費と異なり、金額の制限はない。ただし専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものは除外される(措法61条の4第6項かっこ書き)。
(4)中小法人の範囲
①中小法人の定義
中小法人とは事業年度終了時の資本金の額又は出資金の額が1億円以下であるものをいう(措法61条の4第2項)。ただし以下の法人は資本金の額又は出資金の額が1億円以下であっても、中小法人から除外される。
- ①大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人(措法61条の4第2項1号、法法66条5項2号)
- ②普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部をその全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合においていずれか一の法人とその普通法人との間にいずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人(措法61条の4第2項1号、法法66条5項3号)
- ③投資法人(措法61条の4第2項)
- ④特定目的会社(措法61条の4第2項)
③大法人の定義
次のいずれかの法人をいう(法法66条5項2号)。
- ①資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人
- ②相互会社(これに準ずるものとして政令で定めるものを含む。)
- ③受託法人
(5)一般社団法人その他の資本又は出資を有しない法人である場合
一般社団法人その他資本又は出資を有しない法人の場合、中小法人に該当するかどうかは資本金の額または出資金の額で判断せず、純資産を基準とした金額で判断する(措法61条の4第1項、措規21条の18の4)。