1.分割承継法人の税務
(1)資産負債の取得価額
内国法人が適格分割型分割により分割法人から資産又は負債の移転を受けた場合には、当該移転を受けた資産及び負債の帳簿価額による引継ぎを受ける(法令123条の3第3項)。
(2)資産調整勘定等
適格分割型分割であるため、資産調整勘定等は生じない。
(3)資本金等の額
分割に伴って資本金の額が増加した場合、同額資本金等の額が増加する(法令8条1項1号)。
上記のほか移転資産・移転負債の純資産価額から当該分割型分割による増加資本金額等及び当該法人が有していた当該分割型分割に係る分割法人の株式に係る分割純資産対応帳簿価額を減算した金額が資本金等の額の増加額となる(法令8条1項6号)。移転資産・移転負債の純資産価額は分割法人の資本金等の額のうち当該適格分割型分割により減少する部分の金額である(法令8条1項6号ニ)。増加資本金額等は、当該分割型分割により増加した資本金の額又は出資金の額並びに当該分割型分割により分割法人(分割対価資産の全てが分割法人の株主等に直接に交付される分割型分割にあっては、当該株主等)に交付した金銭並びに当該金銭及び当該法人の株式以外の資産の価額の合計額をいう(法令8条1項6号かっこ書き)。ただし適格分割型分割により分割法人に分割承継親法人株式を交付した場合は、その交付した分割承継親法人株式の当該適格分割型分割の直前の帳簿価額が増加資本金額等となる(法令8条1項6号かっこ書き)。
(4)利益積立金額
当該法人を分割承継法人とする適格分割型分割により当該適格分割型分割に係る分割法人から移転を受けた資産の当該適格分割型分割の直前の帳簿価額から当該適格分割型分割により当該分割法人から移転を受けた負債の当該直前の帳簿価額並びに当該適格分割型分割により増加した資本金等の額、当該適格分割型分割により当該分割法人に交付した分割承継親法人株式の当該直前の帳簿価額の合計額を減算した金額だけ利益積立金額が増加する(法令9条3号)。ただし法人税法施行令4条の3第6項1号イに規定する無対価分割に該当する適格分割型分割にあっては当該適格分割型分割に分割法人の株式に係る分割純資産対応帳簿価額も減算する(法令9条3号)。
3.分割法人の税務
(1)移転資産・移転負債の譲渡損益
内国法人が適格分割型分割により分割承継法人にその有する資産又は負債の移転をしたときは、当該分割承継法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格分割型分割の直前の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する(法法62条の2第2項)。
(2)分割対価
分割対価は株主等に交付される。分割承継法人から交付を受けた当該分割承継法人又は分割承継親法人の株式の当該交付の時の価額は、移転資産及び移転負債の純資産価額相当額とされる(法法62条の2第3項、法令123条の3第2項)。
(3)資本金等の額
資本金等の額が、分割法人の分割型分割の直前の資本金等の額に分割移転割合を乗じて計算した金額減少する(法令8条1項15号)。
分割移転割合とは、次の①の金額のうちに②の金額の占める割合をいう(法令8条1項15号、法令23条1項2号)。
留意点 | ||
① | 分割型分割の日の属する事業年度の前事業年度終了の時の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額 | ・負債には新株予約権及び株式引受権に係る義務を含む。 ・当該分割型分割の日以前6月以内に中間申告対象期間について仮決算による中間申告書を提出し、かつ、その提出の日から当該分割型分割の日までの間に確定申告書を提出していなかった場合には、当該中間申告対象期間の終了の時が基準となる。 ・基準となる当該終了の時から当該分割型分割の直前の時までの間に資本金等の額又は利益積立金額が増加し、又は減少した場合にはその増加した金額を加算し、又はその減少した金額を減算する。 |
② | 分割型分割の直前の移転資の帳簿価額の合計額から移転負債の帳簿価額の合計額を控除した金額 | ・当該金額が①に①の金額を超える場合において、①の金額がゼロ以上であるときは、①に掲げる金額とする。 |
なお分割法人は、分割型分割を行った場合には、当該株主等に対し、当該分割型分割に係る分割移転割合を通知しなければならない(法令119条の8第2項)。
(4)利益積立金額
利益積立金額は、分割承継法人に移転をした資産の当該適格分割型分割の直前の帳簿価額から当該適格分割型分割により当該分割承継法人に移転をした負債の当該直前の帳簿価額及び当該適格分割型分割に係る減少する資本金等の額の合計額を減算した金額減少する(法令9条10号)。
3.分割法人の株主の税務
(1)分割法人株式のみなし譲渡等
①みなし譲渡
内国法人が所有株式を発行した法人の行った分割型分割により分割承継法人の株式その他の資産の交付を受けた場合には、当該所有株式のうち当該分割型分割により当該分割承継法人に移転した資産及び負債に対応する部分の譲渡を行ったものとみなして、有価証券の譲渡損益の計算を行う(法法61条の2第4項)。
②譲渡損益
適格分割とは、分割承継法人又は分割承継親法人のうちいずれか一の法人の株式以外の資産が交付されないもののうち、一定の要件を満たすものをいう(法法2条1項12号の11)。従って適格分割型分割は金銭等不交付分割型分割に通常該当する。
当該分割型分割が金銭等不交付分割型分割に該当するときは、当該分割型分割により分割承継法人又は親法人の株式の交付を受けたときにおける有価証券の譲渡損益の計算については、譲渡対価の額及び譲渡原価の額はいずれもその所有株式の当該分割型分割の直前の分割純資産対応帳簿価額となる(法法61条の2第4項)。
分割純資産対応帳簿価額とは、所有株式を発行した法人の行ったその分割型分割の直前の当該所有株式の帳簿価額に当該分割型分割に係る分割移転割合を乗じて計算した金額をいう(法令119条の8第1項)。
③みなし配当
適格分割型分割の場合、みなし配当は発生しない。
(2)分割対価の取得価額
金銭等不交付分割型分割により当該分割型分割に係る分割承継法人等の株式の交付を受けた場合には、その株式の取得価額は当該分割型分割に係る分割法人の株式の当該分割型分割の直前の帳簿価額に分割移転割合を乗じて計算した金額にみなし配当の金額と当該分割承継法人又は親法人の株式の交付を受けるために要した費用を加算した金額となる(法令119条1項6号)
4.具体例
(1)前提
分割承継法人 | A社 |
分割法人 | B社 |
分割法人の株主 | X社のみ |
X社のB社に対する出資金額 =B社株式の簿価 | 40,000 |
B社の資本金等の額 | 50,000 |
移転資産の時価 | 100,000 |
移転資産のB社における簿価 | 80,000 |
移転負債の時価 | 60,000 |
移転負債のB社における簿価 | 60,000 |
分割移転割合 | 20% |
分割対価の種類 | A社株式 |
分割による資本金の増加額 | 0 |
(2)分割承継法人の税務仕訳
借方 | 貸方 | ||
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移転資産 | 80,000 | 移転負債 | 60,000 |
資本金等の額 | 10,000 | ||
利益積立金額 | 10,000 |
(3)分割法人の税務仕訳
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
移転負債 | 60,000 | 移転資産 | 80,000 |
A社株式 | 20,000 | ||
資本金等の額 | 10,000 | A社株式 | 20,000 |
利益積立金額 | 10,000 |
(4)分割法人の株主の税務仕訳
借方 | 貸方 | ||
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A社株式 | 8,000 | B社株式 | 8,000 |