住民税と事業税は法人税を参照して計算される。法人に対して課税される住民税のうち法人税割の課税標準は法人税額である(地法23条1項3号イ、292条1項3号イ)。また法人に対して課税される事業税のうち所得割の課税標準は各事業年度の所得であり、各事業年度の所得は基本的に法人税の計算の例により算定する(地法72条の12第3号、72条の23第1項1号)。
賃上げ促進税制が適用されると法人税額が減少するため、それに伴って住民税の法人税割も減少しそうである。結論から言えば中小企業者等に該当すれば賃上げ促進税制による減税が法人税割の計算に反映され、該当しなければ反映されない。法人税割の課税標準は原則として特別控除前の法人税額である(地法23条1項4号イ、292条1項4号イ)。賃上げ促進税制は措法42条の12の5で規定されているが、法人税額はこの規定の適用を受ける前のものとされている。従って賃上げ促進税制により法人税額が減少しても原則的に法人税割は減少しない。ただし中小企業者等については適用後の法人税額で法人税割を計算するものとされている(地法附則8条8項、9項)。そのため中小企業者等に該当する場合において、賃上げ促進税制により法人税割が減少したときは、法人税割も減少する。
賃上げ促進税制は法人税額の計算段階の規定であるため、所得に対する影響はない。そのため事業税の所得割の計算に影響は与えない。その代わり特例として外形標準課税の付加価値割の計算に関する特例が設けられている。特例は継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の当該継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が3%以上である場合に適用される(地法附則9条13項)。特例が適用される場合、各事業年度の付加価値額から、控除対象雇用者給与等支給増加額に、報酬給与額から雇用安定控除額を控除した額を当該報酬給与額で除して計算した割合を乗じて計算した金額を控除する(地法附則9条13項)。