1.損益の通算
(1)意義
通算法人のうちに課税所得が生じた法人と欠損金が生じた法人がいる場合、グループ内で損益通算が行われる。損益通算はざっくり言えば課税所得が生じた法人から欠損金が生じた法人に所得が移転する形で行われる。欠損金が生じた法人は所得の移転を受けるため、その分所得が増加若しくは欠損が減少する。計算上は移転を受けた所得を益金の額に算入するという形で行われる。また所得が生じた法人は所得の移転をするため、その分課税所得が減少する。これも計算上は移転をした所得を損金の額に算入するという形で行われる。
(2)用語
損益通算等の規定を適用しないで計算した所得を通算前所得金額といい、通算前所得金額の生ずる事業年度を所得事業年度という(法法64条の5第1項)。
それに対し損益通算等の規定を適用しないで計算した欠損金額を通算前欠損金額といい、通算前欠損金額を生ずる事業年度を欠損事業年度という(法法64条の5第1項、3項)。
(3)損益の通算の方法
通算法人の所得事業年度となる事業年度において他の通算法人で通算前欠損金額が生ずる場合、通算対象欠損金額はその所得事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する(法法64条の5第1項)。通算対象欠損金額は損益通算の金額をグループ全体の通算前所得金額の合計額のうちにその通算法人の通算前所得金額の占める割合で按分した金額である(法法64条の5第2項)。
通算法人の欠損事業年度となる事業年度において他の通算法人で通算前所得金額が生ずる場合、通算対象所得金額はその欠損事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する(法法64条の5第3項)。通算対象所得金額は損益通算の金額をグループ全体の通算前欠損金額の合計額のうちにその通算法人の通算前欠損金額の占める割合で按分した金額である(法法64条の5第4項)。
(4)損益通算の金額
通算前所得金額の合計額又は通算前欠損金額のいずれか少ない金額が損益通算の金額となる(法法64条の5第2項1号、4項1号)。
2.損益通算の対象とならない欠損金額
(1)意義
すべての欠損金が損益通算できるわけではない。
(2)損益の通算が制限される可能性がある法人
通算制度の開始時・加入時に時価評価の対象とならない法人のうち、以下の2つの要件を満たしている法人の一定の欠損金は損益通算の対象とならない(法法64条の6第1項)。
- 通算制度の承認の効力が生じた日の5年前の日又は通算法人の設立の日のうちいずれか遅い日からその通算制度の承認の効力が生じた日まで継続して通算親法人との間に支配関係がないこと
- 他の通算法人との間の共同事業に係る要件を満たさないこと
(3)損益通算の対象とならない欠損金額
損益通算の対象とならない欠損金額はその事業年度が多額の償却費が生ずる事業年度かそれ以外の事業年度かで異なる。
①多額の償却費が生ずる事業年度である場合
多額の償却費が生ずる事業年度とはその事業年度の減価償却費の金額が収益に係る原価及び販管費の合計額の30%相当額を超える事業年度をいう(法令131条の8第6項)。上記の通算法人の多額の償却費が生ずる事業年度において、通算前欠損金額が生じた場合、その通算前欠損金額の全額が損益通算の対象とならない(法法64条の6第3項)。
②その他の事業年度である場合
欠損金が生じた事業年度が多額の償却費が生ずる事業年度に該当せず、かつ、損益通算の制限の適用期間に該当するときは、特定資産譲渡等損失額に達するまでの金額は損益通算の対象とならない(法法64条の6第1項)。
損益通算が制限される適用期間とは当該通算承認の効力が生じた日から同日以後3年を経過する日と支配関係発生日以後5年を経過する日とのうちいずれか早い日までの期間をいう(法法64条の6第1項)。
特定資産譲渡等損失額とは、①から②を控除した金額をいう(法法64条の6第2項)。
- ①特定資産の譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の事由による損失の額として政令で定める金額の合計額
- ②特定資産の譲渡、評価換えその他の事由による利益の額として政令で定める金額の合計額
特定資産とは通算法人が有する資産で支配関係発生日の属する事業年度開始の日前から有していたもののうち、棚卸資産、帳簿価額が少額であるものその他の政令で定めるもの以外のものをいう(法法64条の6第2項1号)。通算承認日における帳簿価額又は取得価額が1,000万円に満たない資産は特定資産に含まれない(法令131条の8第3項、123条の8第2項4号)。また支配関係発生日の属する事業年度開始の日における価額がその日の帳簿価格を上回っている資産も一定の書類を添付・保存していれば、特定資産から除外される(法令131条の8第3項、123条の8第2項5号)。
(4)損益通算の対象とならない欠損金額の取扱い
特定欠損金額としてその通算法人のその事業年度以後の各事業年度の所得から控除する(法法67条の7第1項、2項)。